"GENKA" Triptych

  - for unaccompanied cello -1996

  1. 1.to Taiyuan

  2. 2.Morin-huur

  3. 3.Ostinato



Violoncello solo: Shozo Kurokawa


April 3rd 2009
at Saya-do Hall in Chiba Museum

 

—無伴奏チェロのための—

弦歌三章 (1996)


 1. 太原へ
 2. モリン・フール
 
3. オスティナート


「この曲は1996年秋に脱稿ののち三年を経て初演、さらにその五年後に黒川正三氏による再演の機会を得てからはたびたび同氏によって上演され…」


から始まるノートの一部を2009年出版時の前書き(フォーマルな作品ノートですね)に転用してしまったので、ここには少し別の事を書いておきます。いわばプライベートな思い出メモです。


この曲の原型は、実は'92年に作曲し初演されています。この初演があまりうまくいかず(がんばったんですけれども)、自分の作曲はダメなのかなあと落ち込んで、この曲はしばらく放棄していました。

その後大学の教師になって、夏休みに何かまとめようと思いこの原曲を手直ししました。手直しと言っても、実は4楽章のうち1楽章を破棄しただけです。他は部分的な改訂のみで大きく変わっていません。この際にタイトルは《絃歌三章》に変えました。さて曲を直しても発表の場はなくしばらく"塩漬け"になっていましたが、'99年に神戸で初演の機会ができました。その折のチェリストはイエジ・ボロホビッチという若いポーランド人でした。

主催者を通じて楽譜がファックスで(!)ワルシャワに送られていたのですが、演奏会が近づくと「チェリストが喜んでいる」という話が伝わってきました。まあリップサービスだわな…と思って聞き流していると、ボロホビッチ氏はコンサート来日前になんとこの曲をポーランドで上演してしまったというニュースが入りました。

あ、喜んでるってほんとなんだ…と思って、ようやくうれしくなったでしたね。

さて彼が来日し練習立ち合いとなるのですが、初対面の彼の最初の言葉をよく覚えています。「あなたはチェロを弾くのか?」でした。チェリストが書いたように楽器がよく鳴るという意味でした。自分の楽器法の未熟さを感じていた私には、この言葉はこの上ない励ましでした。

もちろんコンサートでのボロホビッチ氏の熱演は私にとって忘れ難いものになりましたし、音楽というのは容易に国境を越えるんだな、と実感しました。でも、コンサートが終わって三宮でイエジと別れてのち彼とはそれっきり会っていませんし、現在は彼の連絡先さえ知らないのです。文字通りの一期一会でした。


その後この曲は日本人の黒川正三氏によってふたたび見いだされて、楽譜出版に至りました。私の音楽人生の中では、それなりの変転を経ての成果と言えます。


さて、思い出話はこのくらいにして。

もしこの曲に興味を持つ方がおられましたら、ぜひマザーアース社の出版楽譜をご覧ください。黒川さんによる演奏校訂とCD付きです。

作曲者は、音楽が自ずと聴こえてくるような楽譜を書きたいと望んでいるものです。その楽譜に演奏の具体的な提案・ヒントである校訂を加え、さらにその校訂楽譜による録音を行ったCDも付いているわけです。この校訂楽譜を見ながら添付CDを聴くと、チェロという楽器について知っている方なら、今度はチェロと奏者の動きが目に浮かぶような気がしてくるのではないかと思います。

オーディオ・ヴィジュアルな出版を(かなりマニアックではありますが)私なりに試みたとも思っています。さらに楽譜の作品解説に合わせてこの文を読んでいただいたなら、もう完璧!


(2009.9.7記)

 
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(この音源は40秒のみです。全曲CD付き楽譜がマザーアース社より出版されています。)